てらのバイク旅

日本社会でガッツリ働きながら海外をバイク旅して、体験したことや感じたこと、旅の情報を綴ります。 モンゴルバイク旅の素晴らしさと情報を発信したいと思い、立ち上げました。

大当たりと鷲の襲来

ガンボルトさんの家から発ち、一番近い村へ。

旅の最初に一番したかったことができてしまった。

なんて感傷に浸っているそばから、道沿いのお宅(ゲル)の番犬に通過ざま追い回されてチビりかける。モンゴル番犬、マジ恐え。

そして集落で数日ぶりに、念願のガソリンスタンドで給油。

 

さて、どうしよう。

テルヒン・ツァガーンという湖がモンゴル中部にあるらしい。

特にこれといった目的がある訳ではないが、とりあえず西を目指すことにした。

きっとそのうち何かに出会い、それが結果として目的になるだろう。

チベットの旅でもそうだったけど、明確な目的なく、とにかくズイズイ西進するという行動が好き。極東の国に住んでるからか、自分の土地から離れていく感覚をより感じる気がする。

そしてこのモンゴルという土地でバイクで旅をするというのは、誰かの敷いたレールに囚われず、自分の意思で本当にどこへでも行けるという意味を持つ。道なんて無数にある轍でしかないんだから。自分が新しい轍を引いたっていい。

旅に自由になるという意義があるなら、その点でこれほど自由を感じられる場所を他にまだ知らない。引換えに自己責任も。

 

地図を見て、とにかく真西に行けるルートを取った。

草原というよりやや山あいの道が続く。地図上では大きな道の表記だったが、キッチリダート。さすがモンゴルパイセン。しばらく進むと進路が上りになっていく。

 

そして峠を越えたその瞬間、遥か眼下に広がるのは、視野角いっぱいの大草原と地平線。それを見下ろす丘の上。曲がりくねったただの轍にただ一人、俺はいる。

デケェ。

人工物や障害物など視界の限界を決めてしまうものが無い。誰かの庇護下で体験しているなどの、精神的な鎖も無い。

この陸の上で、心と体でただただ地球感じる経験って、どれだけできるんだろとか考えた。

youtu.be

maps.app.goo.gl

だいたいこの辺り。

 

(歌ってはいけない、気持ち悪い動画になる)そう心で思っていたのに残念ながら止めることができなかった…

そして、動画って一番臨場感伝わる手段だと思ってたけど、案外伝えるのが難しい。。

 

しばらく稜線の轍を満喫したのち、道は緩やかに下っていく。

この時、既に違和感を感じていた。

ひとしきり下った草原。俺はヘルメットを脱ぎ捨てる。

そしてモンゴルの大地に、俺は盛大にぶちまけた。

 

朝、丸1日常温で置いた茹で肉を食べた。冷えているのは乳茶に入れて温めるとのことで食べていたが、当然火を通す訳でもない。内臓部分の風味にそこはかとない違和感を感じていたのが、どうやら大当たりだったらしい。

清々しく、キレイに吐き切った。

ここまで吐いたのだから、きっともう大丈夫に違いないと思える吐きっぷり(スミマセン…)

 

落ち着いたので出発する。

しばらく走っているが、妙に体が重い。疲れる。

そうして茶色と緑色の道をどれだけ進んだだろうか。

ようやく景色の中に地図で確認していた大きな川が見えてきた。

道が川に行き当たればそこに集落もある。大きな舗装路にも乗れる。人里に到着だ…!

maps.app.goo.gl

安心感と疲労感でたまらず河原で大の字になる。

モンゴルの強い日差しが心地良い。

そのまま小一時間昼寝を決め込む。



なんとか動ける程度にはなった気がする。

さて。

どうやらここからしばらく南下すると温泉があるらしい。そこでキャンプなどすれば楽しいだろう。

maps.app.goo.gl

重い体に鞭打ち、目的をそれに定め出発する。

 

川と舗装道路のぶつかった所に集落があったので、飲み物を補給してまっすぐ南下、ダート道になる。

ところがどうして、行けども行けども距離が稼げない。

小さな川など越えながら進んでいくが、轍を1本トレースミスするだけですぐルートから逸れてしまう。

そしてこの頃には体調も相当悪くなってきており、発熱による疲労でバイクを前に進めることもきつくなってきた。

 

バイクから降りてしゃがみ込んでいると、今度は何やら頭上が騒がしくなってくる。

見ると鷲の類が集まってきてしきりに旋回している。

チベットでは鳥葬で活躍する奴らだ。よく道沿いで事切れている家畜たちに群がり啄んでいる姿を目にする。

 

待て、俺はまだお前らのメシじゃねえ。

 

このままナメられてるとどこかのタイミングでマジで食われかねない。所詮この世は弱肉強食。志々雄パイセンが目指す間でもなく、この蒙古の大地の支配者は大自然の掟のみ。

ふざけんなとばかりに力を振り絞り、バイクに跨る。

地図を確認するも温泉地まではまだ1時間以上は掛かりそうに見える。そしてこの体調で温泉に入り、野営しようものなら余計に悪くなる一方だろう。

後ろ髪を引かれる思いで草原の温泉地に背を向け、町の宿を目指すために来た道を折り返した。

 

続く