てらのバイク旅

日本社会でガッツリ働きながら海外をバイク旅して、体験したことや感じたこと、旅の情報を綴ります。 モンゴルバイク旅の素晴らしさと情報を発信したいと思い、立ち上げました。

モンゴルツーリング費用編

2023年夏時点でのモンゴルバイク一人旅での費用をまとめます。

テント泊とゲストハウスを組み合わせたモデルケースになります。

 

通貨

1トゥグリク=0.04円。ゼロ1つ取って÷2すれば大体日本円の値段になります。なんならもうちょっと安い。

2023年時点ではレギュラーガソリン(「92」(ユルンホイル))が2500トゥグリクなので、ほぼ100円。バイク旅中に掛かる費用のほとんどはガソリン代でした。AG20/Lなので、2200km走って110L、なので単純計算で11000円をガソリンで使ったことになります。ツーリング中は野営ならインスタントラーメンやパンなど1100円もしないぐらいかも知れません。僕の場合は流れでよく現地の方にご飯をご馳走になっていたので、自炊は3回程度しかしなかったと思います。

 

ゲストハウス

シャワー浴びたい、洗濯したい(川でもぶっちゃけできます)、機器の充電したい(AGUSB電源取り付けていただいてたので、モバイルバッテリー介して永久機関でした)などで泊まることがあると思います。僕はお腹大当たりして発熱した時、ゆっくり体休めたり含め、ツーリング中は合計4泊しました。ドミ1泊で2食食べてランドリーサービスまでお願いした際の相場が77000トゥグリク程度=3000円だったので、僕は今回半月で12000円程でした。

お昼ご飯

ロードサイドや村の中にある食堂で食べることが多かったです。そういうわかりやすい店は111000トゥグリク程度=440円程度(看板なしのゲル食堂はも少し安い)なので、11食食べたとすると4840、約5000円程度。何度かは行動食で済ませることもありました。水も当然適宜買っています。

村の道路沿い食堂。結構ちゃんとしてる

道沿いだとわっかりやすい看板出てたりする

サービスエリアみたいなとこのフードコート的なの。悔しいことに大変ウマい。

 

最初はどこか現地で乗馬アクティビティでもやるかなーと思いましたし、温泉(20000トゥグリク程度)も入ろうかなーと思っていましたが諸雑費は結果ほぼゼロ。とにかくこの国を旅するのは金じゃない。

 

ということで、食費5000円+宿泊費12000円+ガソリン代11000円=28000円がツーリング中に使用した総額になります。欧州人オサレ宿にプチ沈没してコレ。

 

レンタルバイク

AG2005200/日でした。ラダックなどと比べると高いですが、一般的な先進諸国のレンタル費用と比べるとかなり割安だと思います。同時期のタジキスタンでも100ドル/日程度からでした。

但し、バイバック(バイク購入旅が終わったら売却)はモンゴルではバイクは貴重なため現在のところ行なっていないようです。相談していくことで変わることもあるかもしれませんが。

僕は13日間借りたので、単純計算で67600円、北海道ツーリングで1週間レンタルバイクするより安いです。むしろこの値段で2200㎞好き放題ダートも走り回ってで考えるとありがたみすら国内では絶対できない笑

 

Relax House宿泊代

バイクの場合ウランバートルでの拠点となる、味戸さん経営の宿。

コロナ以降、モンゴルでも全体的に物価が上がっているようで、2023年では4000/日(朝食込み)でした。最初2日間、最後2日間の4日間で16000円。プラス夕食代とランドリーサービス代で計2万円弱といったところでしょうか。

空港送迎

空港ウランバートル市内(約50㎞)で白タク相場が120000トゥグリク=5000円程度、プラス味戸さんのRelax Houseまでがもう10㎞です。味戸さんに送迎を依頼すると6000円。タクシーの相場とほぼ変わりません。正直このぐらいなら送迎お願いして良いと思います。ツーリングなので荷物も多いでしょうし。

私は慣らし兼ねてバイクを借りて行いましたが、節約するなら初日ウランバートル市内に宿泊して両替、sim購入を済ませ、27番バス(下記)でRelax Houseまで行くテもあります。けど、味戸さんの宿が名前通りの神環境すぎるのと荷物を考えると、割り切って滞在しても全然いいと思います。

 

市バスについて

ウランバートル中心部とRelax Houseを結ぶ移動手段は主にバスになります(バイク自走、タクシーももちろん可です)。宿の目の前の道路に出て右に23分程度歩くとバス停があります。日本と同じようにバスが停まれるよう歩道がへこんで停留所が設けられています。バス停を表す看板などは立っていませんが、すぐ分かると思います。

https://maps.app.goo.gl/E6kzXU48fd2xkwWR6?g_st=ic

 

バス停で待っていれば15分ごとぐらいでバスが来ますので、現金500トゥグリクを乗車時に運転手に渡して(地元民はバスカードで支払っていますが問題なしです)乗ればOKです。

ウランバートル中心部に最寄りのバス停はガンダン寺前(下図)です。

https://maps.app.goo.gl/8dzrenQceHrP8nvJ8?g_st=ic

バス停には概ね勝手に停まってくれますが、あまり人が乗り降りしなさそうな雰囲気の時はGoogle mapなどオフラインダウンロードした地図を見ながら、バス停近くになったら降りる雰囲気を出せば停まってくれます。

Relax Houseへ戻る際は同じくガンダン寺前などから「27番」と表示のあるバスを見つけて乗ればOKです。

バスは車やバス停なども割と日本などと似ている雰囲気で、利用方法さえ一度分かればかなり使いやすいと思います。

 

バス停からウランバートル中心部までも割とすぐ歩ける距離だし、朝晩など余程の渋滞にハマるタイミングでなければ時間もそんなにかからないと思います。

 

その他

ウランバートル市内での滞在は普通に都市での生活です。1食ちょっと小綺麗なところで食ったら1000円程度、コーヒーなぞ飲もうものなら11000円取られたりします。日本より高い。中心部はコンパクトにまとまっており、27番バス停をスタートに徒歩で概ねの所は周れます。

滞在費は人によりけり、僕はお土産で3000円程度、食費で3000円程度でした。

 

今回の旅行費用総額

上記の費用合計で、約135000円、プラス航空券(ギリギリまで行き先を迷い、14(通常であれば10万円以下でいけると思います))で、全て含めて27万円程となりました。コロナ以降の物価高で、費用は地味に上がっていますが、航空券を計画的に取れば20万円前半台に収まるはずです。

ちなみにツアーも調べてみましたが、いずれも2023年時点で40万円を軽く超えるプライスでした。

ちなみに味戸さんとの会話の中でサポートカー出して連れていくみたいなお話もされていたので、ツアー的に行かれたい方はそういった相談にも乗っていただけるかも知れません。

 

まとめ

旅のイニシャルコストは少々掛かるものの、その先はスタイルにもよりますが相当費用は抑えられます。

経験に対する費用としては実質無料!!!

短期間でも、ウランバートル近郊だけでも正直十分モンゴルできちゃうし(情報出しまっせ)、発展して今のモンゴルが逃げてしまう前にいかが?

モンゴルでのバイクレンタルについて

モンゴルを一般人が個人でバイク旅するにあたり、おそらく最重要情報となるであろうレンタルバイク屋さん兼日本人宿兼スゴ腕整備工場「Relax house」です。

私のブログで何度か名前出してる「味戸さん」という、某日本車メーカーとしてパリダカファクトリー参戦経験もある、自動車業界のモノスゴい方が独立して営まれています。

https://maps.app.goo.gl/ynzpyBJXLpSoiKpM7?g_st=ic

 

世界のライダーが長旅の途上、ここのファクトリーで相棒を託し、長旅を続けられる状態に整えていく、そんなバイクにとっても、また、宿の快適さから人間にとってもオアシスのような場所です。

 

私はメタボンさんに紹介していただき(本当に感謝です!)、事前にFacebookから連絡を取り合って、バイクを用意してもらっていました。

費用については別項でまとめますが、かなり現実的な値段で叶うと思います。

 

快適なドミ以外にも、ゲルでの宿泊もいきなりできます

快適すぎるので、目的を見失わないよう注意

宿からの景色が美しい

入り口はこちら。

アクセス等は費用編でまとめて解説します。

 

快適な寝室や住空間、食事、ホットシャワー、ランドリーサービス、情報、日本語…

旅の宿に求める全てが揃っています。(いい意味で彼の地において異空間なので、間違えて沈没しないように)

 

モンゴルをバイク旅するならば、とにかくこちらでお世話になっておけば間違いなさすぎる(てか実質ほぼ一択?)ので、旅程を詰める際まず連絡を取られると良いと思います。

必要な方にはFB紹介しますので、おっしゃってくださいね。

モンゴルバイク旅の準備 道具編

ご無沙汰しています。

そろそろこの夏の予定を考えている人もいるかと思うので、1年経っても書き終わらなそうな日記よりも笑「モンゴルツーリング(単独)の準備」の情報を先にまとめていきたいと思います。

 

海外ソロツーリングなんてどうリスクヘッジすればいいの?をとにかく解消することで、一人でも多くの人にモンゴル(やその他海外)をバイクで旅する素晴らしさを肌で感じてもらいたいです。

 

以前アップした、「モンゴルツーリング情報」編と併せて読んでいただければ幸いです。

 

 

それでは今回は、具体的にどのような準備を行なったのかを紹介したいと思います。

 

日本での準備

 

道具編

ドッペルギャンガー ターポリンサイドバッグ

写真左のやつ(ツーリング後なので汚れてます)

Amazonで安かったため購入。岩手のツーリングで一度使いました。

容量はソフトシェルのサイドバッグとしてしっかり入ると思います。スーツケースに入れて持ち込めるソフトサイドバッグはテント寝袋食料工具、現地で出会う人への手土産など積んで走るために、私としては必須のアイテムだと思いました。

ちなみにハードパニアは転倒時に体が挟まって抜けなくなるという安全面の理由で、この手のツーリングでは敬遠されるという話も聞きました。(私も今回二度下敷きになりましたが、無事一人で抜け出せました笑)

これは完全に私のミスですが、ツーリング終盤でバッグが徐々に下に垂れ下がる形になってマフラーに接触、熱で穴を開けてしまいました。骨折等で余裕がなくなり、確認作業を怠った最後の方に発生したアクシデントでした。こまめにバッグの状態を確認することは必須だと思います。

 

バックパック

リアシートに積載。機内持ち込みのバッグにも使用。

電子機器など一番守りたい物はここに。

サブバッグ

バックパッカーとして使う体の前に掛けられる肩掛けのバッグ。貴重品やカメラもこの中。ツーリングなら小型リュックでもいいと思います。

 

デイトナ バイク用荷台ゴム紐

ツーリング用のシートバッグを持っていなかったので、バックパックを積載するために使用。2.5mのものを買いましたが、長さ調節もできるし非常に良かったです。ちなみに引っ張って緩むテンションだと悪路で荷物が落下したので、長さ調整機能を使ってしっかりテンション掛けることが大切です。

調べて出てきた両サイド&クロスの掛け方で固定すればすこぶる安定したので、ツーリングネットよりもこちらでの積載をお勧めします。

予備に100均の積載用ゴム紐も用意していきましたが、トラブル時に実際使用したのであるとよいと思います。

 

小物類

キタコ ビーバーシーラント(パンク補修剤)

手足のレバー類含めほとんどの部分への転倒リスクが考慮された作りのAG200を手配したとして、恐らく最も懸念される現実的なトラブルがパンクだと思います。私自身チューブタイヤのパンク補修をしたことがなく、方法やコツ自体は色々な方に聞いて教わりましたが、現場で初めてでできる自信はなく、応急処置としてコイツに頼り、状況次第で町で修理をお願いするというイメージでの対策としました。

パンクしたチューブの内側に流し込み、穴を塞ぐイメージだそうです。

今回のツーリングではまあまあキツめのギャップや穴にも突っ込んでしまったり、ヤワいタイヤでは危険そうなシチュエーションも何度かありましたが、空気圧を落とさない状態ではリム打ちする気配もなく、フロント21インチとオフ用サスのAGのパンク耐性は素晴らしいレベルだったので使用せず済みました。(空気圧落としたらわかりません)

オフ車すげー

 

タイヤレバー

自分で直せるとは限らなくても、道具さえあれば通りがかった人に助けてもらえる可能性が高まるという点からも用意。&「技術の習得から逃げるな」と、自分を鼓舞する精神ツール。

 

携帯マルチ工具、スパナ数本、モンキー、プライヤー

プラスマイナス、主だったサイズの六角、スパナ辺りはマイナートラブルでも必要になるので。逆にここらで賄えないような重整備は想定してもしょうがない、助けを呼んで町で整備という考え方です。

どれもAmazonなどで安く売ってる物。

実際活躍したのがプライヤー。抜けないペグを引っこ抜く時や、固くて出せないオピネルの折り畳みナイフを引き出す際に活躍。笑

また、オフロード走行時の定番工具として挙げられますが、シフトペダルなどが折れて自走不能になった時にペダルやレバー代わりになる、バイスプライヤー(ロッキングプライヤー)があるとより安心かも知れません。

 

チェーンルブ

機内持ち込みできる、AZというスプレーでないもの。AGはチェーンがフルカバードだったため使用せず。そうでないバイクでは必須。

 

エアゲージ&空気入れ

パンク対策で空気圧パンパンのまま走ったので使用しませんでしたが、パンクなどで必要になるので。

 

軍手、雑巾

雑巾はサイドバッグとマフラーの間に噛ませて熱対策用。

 

養生テープ

様々なトラブル時に使えるので、マストだと思います。

 

オピネルナイフ

肉買って焼いたり煮たりして食ってやろうと鼻息荒く、まな板代わりのシートまで持参したのに、紐切る以外使わず笑

 

(以下写真なし)

身動きが取れないなど、遭難した際に居場所を知らせる用。すぐに出せる場所に携帯しておきましょう。

 

方位磁針

迷った際の方角を調べる用。実際はスマホMaps.meGoogle mapで完全に賄えました。

 

モバイルバッテリー

今回のAGは味戸さんの好意でUSB給電器を取り付けていただきました、無敵。それでもカメラなどへの給電に活躍。

 

Maps.me

道具ではないですが最も重要と感じたツールがこれ。「デジタルに全乗っかりなんてダセぇ!俺はスマホなど見ないで自分の感覚で進む旅人なんだぜ」と調子に乗っていましたが、その結果道を外れ、要らぬ渡渉で転倒したり、とんでもない大回りをしたり(結果良い思い出ですが)

「時間はいくらでもある、全て受け入れるぜ」というなら別ですが、結論分岐や道が怪しくなったら必ず確認した方がいいです。「今走ってるの道じゃねえ。数十m向こう側だった」みたく、助かったこと数知れず

 

余談というかとても重要な話ですが、「道を外れなければコケないトラブらない」というのが今回いろんな失敗をして得た学びです。

ダートであっても、そこが泥濘地だろうとスリッピーだろうと、道としてならされている場所であれば人間がちゃんと気をつければマシンにトラブルを起こしたり転倒するような路面状況ではないです。

逆に今回転倒したのは全て「道」から外れた場所の走行での極端かつ急に現れる路面状況の変化によるものでした。

草原の丘など、外れてブッ飛ばしても平気な場所もあるんですけどね。

 

ガスについて

野営で欠かせないのが火。どこかで売ってるだろとタカを括って日本からプリムスのバーナーを持参した所、全く合うガスがモンゴルにはありません。売っているのは全てカセットコンロ用のガスです。

僕の場合は味戸さんに紹介していただいた下図のアウトドア用品展で最終的にカセットコンロガスで使うポータブルコンロを購入できことなきを得ましたが、その店以外では全く取り扱いもなかったので、日本からガソリンストーブを持参するのが一番確実かと思います。

ちなみに現地でゲットできたバーナーがコレ。生命線でした。

カセットコンロ用ガスしか手に入りません

https://maps.app.goo.gl/P3GGE1DNeFVsSX3p8?g_st=ic

 

ここの一角にあるアウトドア用品店(現地ではここ以外では見なかった)で売ってました。

 

食料

モンベルフリーズドライリゾット

登山のキツめのテン泊時に助けてもらってる、軽くて小さくて美味しいリーサルウエポン。

4つぐらい持っていきましたが、結局ありがたいことにほぼ食事に困らず、そのまま日本に持ち帰りました。

 

コーヒー

野営といったら必要だろ

日本で粉挽いて持参。

 

スニッカーズ的なバー

アウトドア活動において非常時やカロリー計算間違えてシャリバテした時のために非常食は必ず持参。

 

日本のお菓子

現地でのお礼用。今回は飴細工的な見た目のキレイな砂糖菓子を持参。ガンボルトさんたちに喜んで食べてもらえてよかった。

 

アミノバイタル

体力的にしんどいシチュエーション対策。今回は使わなかった。

 

塩タブ

8月のモンゴルはひたすら爽やかな気候なので同じく使わず。

 

以下、現地で調達した食料

ノーミンスーパーの菓子パン的なの

中にデーツみたいなの入ってるザクザクしたのがメチャウマ。朝メシは現地パン。

 

インスタント麺

缶詰

有り難いことに旅中ご飯ご馳走になりまくったおかげで、ほとんど野営で自炊しませんでした笑

さすがに寂しくって最後わざわざ一日余計に完全野営したぐらい笑

案外外でご飯食べられたりもするので、食事については心配しすぎることはないと思います。町にはスーパーや商店も必ずあるので、最小限で大丈夫。

 

趣味枠

写真現像&バックアップ、日記用のiPad,Go Pro、カメラ用品等

オフロード走行の振動や水没()等でバッグの中でもかなりボロボロになったので、持参する際はある程度そのつもりで。

 

2週間でめちゃ年季入ります

 

その他

薬やファーストエイド、ボディウエットシートなど。

 

ちなみに飛行機乗る際のパッキングはコレ

テント寝袋ヘルメット着替えなど、デジタル機器以外はほぼスーツケースに詰め込みました。

最後にサイドバッグ重ねて(ツーリング終了後に撮ったので汚れてます)
スーツケース閉めるの大変でした笑

 

まとめ

スパナ等の工具類はほとんど使わなかったので、もう少し省けると思いました。

分からないことあれば、質問いただければお答えしますので、お気軽におっしゃってくださいね。

嵐の後に

85日 続き

 

若者はすぐに僕をゲルに招き入れてくれた。カッパを羽織ってはいたが、ずぶ濡れでこのままだと風邪を引きそうなので、ザックからタオルを取り出して体を拭いた。

外はまさに嵐の様相だが、簡易住宅であるゲルの中は至って平穏、雨漏りの気配も微塵も感じない。人間は遥か昔からすでに立派な叡智を積み上げてきたんだと思い知らされた気がした。

 

どこから電源を引いているのだろう、裸電球1つの薄暗いゲルの中で1時間程経った頃か、入り口の扉が開いた。

若者と同じく逞しい体つきをした男性と、しっかりしていそうな雰囲気の女性。歳の頃は成人ぐらいの若者の、丁度親御さんのように見える。

事情を話すと、謎の異邦人がマイハウスにいきなり登場している事態にも関わらず、休んでいけと快諾してくださった。やはり若者(名を「ニャンバートル」という)(かわいい)の、親御さんであった。

この家の主人、ガンボルトさんと奥さんのデルゲルチャルガルさん

お湯と乳で煮出したお茶と、乾パンのようなもの、それに付ける手作りのクリームチーズのようなものをいただく。

絞った牛乳を火にかけ、何度も掬っては鍋に落としてクリームチーズのようなものを作る

 

そうしている内に雨が上がってきた。

時間を見るともうすぐ夜の9時なのにまだ日があって、日没間際の景色が美しい。

空には虹も掛かっている。広大な大地の中で人間のスケール感なぞお構いなしに展開されている自然の中に身を置いていると、なんとも言えない感動が全身に広がっていく。

21時過ぎ、モンゴルの大地に夕陽が沈んでいく

嵐の後の空に虹。先ほどの恐怖との落差で、感動もひとしおだった。

ゲルの若者、ニャンバートル

 

おそらく乳を発酵させて馬乳酒を作っているのだろう

 

番犬君たちもすぐに心を許してくれた様で、親しげに寄って来ては遊んで遊んでとベロベロ。外の世界の者にはあれほど容赦ないのに、落差にやられる。。



その日は外でテントを張って寝ることにした。

この環境と安心の中、外で寝るというこの上ない贅沢

 

前日と違って完全に草原の中でのテント。目の前にゲル、上には満天の星、すげぇ。

見たことのない、空一面に広がる天の河を見ながら寝る

 

閑話休題的プチ事件。

夜中、星を撮りに外に出た際、2秒セルフタイマーの「ピッピッピッ!」という電子音にテンパった番犬君たちが一斉に吠えて襲いかかって来てしまい、「ゴメンゴメン!」と謝罪しながら飛び上がって逃げる羽目に。(おどかしてゴメンよ)

 

 

朝方、テントの頭上に何かが触れると思ったら、その番犬がびた〜っとくっついてる。

人と一緒に寝ることなんてない身だろうから、甘えたかったのかも知れない。

 

 

中々に壮絶な、そして人や自然の美しさに恵まれた、素晴らしい日だった。

大陸の道と、モンゴルの嵐

85日(土)

ツーリング2日目。

朝方、寝ている時にテント間近に複数の馬が訪問し、ピリッと緊張感が走った。結局フィジカルコンタクトはなくことなきを得た。

朝メシにノーミンスーパーで買っていたパンを食って出発。

今回の旅はとりあえず西へ、できるところまで行ってみようという計画(?)

本当は鷹を操るカザフ族の里、モンゴル西の果てのバヤン・ウルギーを目指したかったが、「遠すぎる」とのこと。氷河擁する山もあるし、いつか行ってみたいな。

 

現実的には、とりあえずモンゴル中央部の山岳地帯にある湖、テルヒン・ツァガーンまで行ってみよう。

 

ハエ草原を出、西進。アスファルトはひたすら草原を突き抜け、時折村が道沿いに姿を現す。いくつめかの村で昼食。今日は前回の反省を生かし、メインとスープを両方頼む。両方とも肉の味が濃い。最高だ。

意外と野菜も付く。ほぼトマトとキュウリ

腹ごしらえを済ませ、快調にアスファルトの幹線道路を地図通り真っすぐ進んでいた。真っ直ぐだ。いつの間にか舗装路は消え去り、道はダートに。

 

…日本で国道走ってていきなり道消えることあるか?(後からGoogle mapで見たら、まっすぐは一応新道だった)

 

しかし、遂に求めていたモンゴルだ。

地平線まで真っ直ぐに消えていくオフロード、これが世界だ。これを味わいたくてここまで来た。本番が始まった、と思った。踏んだ水溜りの泥水だって心地よい。

念願のどこまでも続く野生のダート!喜びが溢れ出た

 

と、調子に乗っていたところで、大きな問題が。

事前に聞いていた給油事情は、「幹線道路沿いには必ずスタンドがあるから、心配はいらない」とのことだったので、1つのスタンドを見送っていた。

ところが太い道といえどダート、どうみてもスタンドはなく、mapで確認しても次の町には間に合わない距離。

そしてそうこうしている内に、リザーブに入る。

このままでは草原の中でガス欠だ。

 

もうやむにやまれず、ゲルでガソリンを分けてもらうことにし、ゲルを訪れる。

この国のゲルには優秀な番犬が必ずいて、見知らぬ者が近付くと、容赦ない洗礼を受ける。

こういう時「サンバノー!」と家主に向けての挨拶を叫ぶと、番犬も客か?と警戒体制を一瞬緩めてくれる。

ゲルに訪問する際は必ず声がけを。

 

1軒目のゲルでは分けるガソリンを持っていないと断られ、2軒目へ。

事情を説明すると、どうやって分ければ良いかを一生懸命考えてくれ、家のバイクのガソリンタンクからホースを外し、ペットボトルにガソリンを抜き取って分けてくれた。

お礼を述べて料金を払おうとすると、「お茶を飲んでいけ」と、招待を受ける。

お茶と馬乳酒。アルコールはほぼないので旅の途中でも…

 

この国初めてのお宅訪問。煮出した茶をミルクで割ったお茶と、パン、それにつける用のクリームチーズのようなもの(手作りするらしい)と、ビスケットのようなものを出していただく。

こっちはガソリン乞食だぜ?懐が深い。。

 

そろそろお暇をと、感謝の気持ちを伝えて出発。本当に助かりました。




どこまでも続くダート、こんなに心地よいとは

当然のように道に羊も転がっている。



写真撮りまくりながら楽しく進んでいたら気づけば夕方
6時頃に。モンゴルではまだまだ日が高いとはいえ、そろそろ野営地を決めなくては。

眺めのいい所がいいなと走っているとちょうどいい湖が。

遥か遠くの山に黒い雲が掛かっているのが気がかりだったが、風向きをみてもこちらにはやって来ないだろうと判断し、荷を解いてテントの設営に入った。

 

と。

 

「風向きが変わる」という言葉があるが、ここまで物理的に、そして逼迫感をもって言葉の意味を実感するとは思わなかった。

一気に今までと真逆のこちら向きに、嵐のような強風が吹き荒れ、真っ黒な雲が瞬く間に襲いかかってくる。

旅立つ前に聞いた「3時までにはその日の行動を終える人がいる」という、まるで理解不能だった言葉が頭をかすめる。自然は甘くなかった。

 

一瞬テントを諦めようかと思う程の速度感をもって頭上に到達しつつある風と雨。

大慌てでどうにかバッグに道具をブチ込み、アクセルを全開で捻る。すでに大粒の雨が全身に叩きつけられている。

この嵐に呑み込まれたら終わりだと瞬時に感じる程の猛烈さ。

そしてなにより、頭上で轟く雷鳴と、この大草原の中で地上から唯一突起した、鉄のカタマリとひとセットの俺。

 

本気で、ヤバい。

 

兎にも角にも嵐から離れようと走るが、逃れられない。

 

どうするべきかと思っている内に、家畜の群れが視界に現れる。

家畜が集まっているということは、他の場所より安全なのかも知れない。そう思い必死にハンドルをそちらへ向けた。

 

すると、視界の隅に1軒のゲルが。

 

「サンバノー!!」番犬はすぐに止まってくれた。

扉が開き、中から民族衣装を着た若者が現れる。

 

 

続く

モンゴル旅、出発

ゆうべも遅かったので、今日ものんびり9時まで寝る。日本でも通常ツーリング開始日にこんなのんびりなんてあり得ないので、ほんとストレスレス。こういう時間の積み重ねがきっと心身の健康に繋がるんだろう。

Relax house 様々な国から来た来た旅人の足跡が貼られている

リビングでゆっくりコーヒーいただきながら今日からのルートの検討&再確認。紙の地図はこういう行程を組み立てたり俯瞰したりする際に「ここを抜けてこちらを回るとこの日程の中では面白いルート編成になりそう」みたくイメージしながら直感的にラインを描ける。なので俺はあった方がいいと思う。

 

のんびりも満喫したしそろそろ出発。

モンゴル着いてからずっと喋りっぱなしだったので結局パッキングもギリギリになり、ここからバイクに取り付け。

味戸さんにUSB電源取り付けていただいたので(お忙しい中ありがとうございました!)、無敵旅仕様のAG200が完成した。

まだキレイな頃のAG号

いよいよ出発という時に、同じく出発準備していた軽トラサウナ号の二人も見送りに来てくれた。

バイクとサウナ、異種すぎる旅スタイル同士の記念撮影。

互いにがんばろうな!



のんびりすぎる出発だったので、昼メシを食えるうちに食わねばと思い、出発したと思ったらすぐにメシ屋探し。笑

昨日最初に両替しに来た近所の町の道沿いで一軒やってそうな雰囲気の店があったので入る。

するとあらまあ可愛い可愛い店員さん。一生懸命接客してくれる。

ヤポン(日本人)が珍しかったのか、ツーショをお願いされたので、俺のスマホでも撮ろうとしたら、ほかの子達も

スッ スッ

と無言でポーズをとってフレームイン。か、可愛い。

ちなみにこの日、お店関係のお父さんの誕生日パーティーだったらしく、一緒にちょっとお祝いさせてもらった。

ここでも公私の隔てのなさを感じる。

ボーズ(餃子)的なものの入った、ミルクベースのスープ

改めて出発したが、頼んだメニューのボリュームが足りず(水餃子みたいなのを頼んだつもりだったが、スープの位置づけ程度のものだったっぽい)、ウランバートル市内のコンビニに寄ってピロシキみたいなものを2個ぐらい食う。今度は逆に密度高めの粉もんで重たい。笑

 

大渋滞のウランバートルTOKYOシティで培ったすり抜けでなんとかかんとか泳ぎ切り、やっと郊外に出る。

アスファルトの道は基本よく舗装されてるが、時々穴ボコトラップがあったり、AGのフロントが急に蛇行し始める(怖い!)妙なグリップの舗装だったりで、案外気が抜けない。羊やら牛やらもお構いなしに横断してる。



夕方になり、道路沿いのサービスエリア的な施設に遭遇。目の前に食い物があると食わずにはいられない習性があるので、早めの晩メシにする。

こういう所は写真もあってわかりやすい

蒙古肉、美味ぇっす

 

のんびりしすぎたので当初の見積もりよりも進まず、ウランバートルのお隣、ルン郡の川の近くで道路から離れ、適当な場所で野営。

溢れる羊と荷物

よしよし、自然の中で、自分が決めた場所で野営だとルンルンしていたのも束の間。

 

この辺り、とんでもない数のハエがいやがった。

自分の生息域に突如現れる有機物の俺に、とんでもない勢いで集まりやがるハエ共。全身から顔の穴という穴まで小バエまみれに。鼻に入る度鼻水も出る。

こんなん聞いてねーと思いながら必死で払っても蚊取り線香焚いても、持参した虫除けスプレー浴びまくっても全く効果なし。もしかしたら今後もこんな感じなのか?(結局この日だけだった)とかまで考え、ハエにガリガリメンタル削られる。さらに風も強く、慌てて焚いた蚊取り線香の上にペグダウン前のテントが飛び、ステラリッジに穴が。(養生テープで塞いだ)

余談だけどモンゴルバイク旅はとにかく日本の山やツーリングでは考えられないぐらい装備がダメージを受けた。オフロードをバイクで身ひとつの旅をするってのはそういうものなんだろう。

 

その厄介めな風だけど、吹いた時だけハエどもが吹き飛ばされていなくなる。

その隙間を狙って写真を撮ったりした。

なんだかんだでモンゴル初野営、嬉しい

草原の遥か遠くの遠雷を眺めながら就寝。初のモンゴル野営はなかなか骨が折れた。

モンゴルの休日

83日(木)

9時頃にのんびり起床し、朝ご飯を頂く。

予定パツパツの通常の旅行だと味わえない、時間に縛られないゆったり感にとても大きな喜びを感じる。みんな休み死ぬ気で取るのだ。普段ちゃんと仕事してりゃ案外通ったりするかも。

 

朝食いただきながら味戸さんとまたゆったりお話しながら過ごしつつ(幸せ)、頃合でバイクの説明を受ける。

今回の相棒、AG200



コケて打ったり折れたりしそうな場所全て、いかにも丈夫な鉄パイプで完全ガードされてる

サイドスタンドも両側に付いてて非常時のメンテナンスにも役立ちそうだし、チェーンもフルカバーされてるし、ぐうの音も出ないほどの無敵感

 

燃費もかなり伸びそうと、KLXの経験と憶測から、この時は浮かれていた。この旅1つ目の大アクシデントに繋がるとも知らず

 

さて、文無しsimなし野営のガスなしだったので用足しDAY

ウランバートルは混雑するからと、近くの町のハーンバンクという銀行を紹介していただいたが、行ってみると「口座がないと両替できない」とのこと

当初の予定通りウランバートルへ。

市内に近付くと渋滞がすごい。けど、すり抜けしてると車がみんな寄ってくれる。モンゴル人、運転は荒いけど優しいぜ。

 

市内で調べてあった両替商ポイント(ハーンバンクでも同じ場所を教えてくれた)で適当な両替屋に入り、路銀をまとめて両替。2週間でとりあえず5万円あれば十分だろうという目算。

現地の通貨トゥグルクは、100トゥグルク=4円。10000400円。かなり数字が大きくなる系。

 

で、やりやがった。

紙幣を確認していると、端数が入ってない。指摘するとすぐ渡したが、きちんと残りのン十万という大量の紙幣を数えたら、今度はまあまあの単位で抜いてやがった。さっきの端数はブラフか。

こちらも全く悪びれずに残額を渡してくる。極めつけにお仲間は笑顔で「ジャパン、ナイス」とか言っちゃってお見送りしやがる。

さすがバルカ、ここは日本じゃない、奴らが正義だ(実際はそんなモンゴル人、ほとんどいないっすよ!笑)

乃木も何度も通った広場(VIVANTロケ地)

simUNITELというキャリアが郊外でも通じやすいとのことで、市内中心部の一番大きくて有名なお店、ノーミン(nomin)デパートに買いに行く。ちなみにノーミンスーパーはモンゴルの頼れる覇権スーパー。

蒙古最大、ノーミンデパート

コロナ前情報では2階とのことだったが改装したのか、5階にショップ。

こちらは地元の要領得ないじいちゃんがショップのお姉さんに手間掛けてる以外は、特に問題なく購入。プランも前情報と違って電話とネットのパッケージプランで、日数およびギガ数の選択だったけど、どちらにしろ数百円で滞在分賄えるので問題なし。

 

腹ごしらえはノーミン前の交差点渡った先のメシ屋の並びにある、ちょっと都会的なモンゴル料理屋で炒めたきしめんみたいなのを食う。量が2人前ぐらい入ってるが、肉の味が良くて美味い。

 

で、一番の問題だったのがガス。出国時「きっと売ってるだろ」ぐらいでプリムスのガスバーナーを持参し、手荷物預けできないガスはモンゴルで買うつもりだった。

が、見事に影も形もない。大きな店、アウトドア用品扱ってる店等散々探したが、あるのはカセットコンロ用のガスのみ。それに着火させるのは手で持つしかない着火用のガスバーナーか、卓上コンロの2択。

2週間の行程中全ての野営で湯がないというのは、死活問題に近い。

56件目ぐらいで日本語話せる客がいたので聞いてみたが、モンゴルにはこの形しかないと言われ、相当探し回って疲労も溜まっていたこともあり、大荷物覚悟で渋々カセットコンロを購入。

 

ところが。

朝、味戸さんに教えていただいた、宿のすぐそばのノーミンスーパー敷地内にあるアウトドア屋に最後試しに寄ってみると、

 

こんなにちっさい素敵なバーナーが。。

カセットコンロ用ガスで使えるミニコン

「さっき買った俺のコンロと物々交換できませんか?」

値段は俺のものの方が高いしイケるのではと踏み持ちかけてみたところ、交換成功。さすがモンゴル。この柔軟さ、日本人も見習うといい。

そして帰り際に「welcome to Mongolia!

今度のは素直に嬉しかった。笑

てか先にこっち行けや俺。

ドタバタだったけど、これでコンパクトな荷物でラーメン食ったりコーヒー飲んだりできる。よかった。。

モンゴルにはバイクと燃料を共有できる、ガソリンストーブ持参するといいと思います。

 

Relax Houseから見たモンゴル。夕暮れが美しい

宿に戻ると昨日のドライバーのご家族(味戸さんの奥さまの兄弟の夫婦とのこと)とバーベキューの支度をされており、お呼ばれいただいた。

ある程度食べ終わって落ち着いた頃、味戸さんの携帯になにやら連絡が。

「今から軽トラにサウナを乗っけた日本人が突然来るらしい」とのこと。

情報量が多い。

 

 



来た。

 

本当にサウナ積んでやがる。

 

およそ常人には想像すら叶わない発想力。チビる。

聞くとモンゴルスタートでユーラシア横断し、最後サウナ号の生まれ故郷の東南アジアに戻ってくる計画らしい。

インド人がサウナに入った感想もらえるとか考えたら夜も眠れない

世界中の人々をととのえてくれ。応援してるぜ!

 

夢に向かって突き進むサウナ青年と午前様まで語り、就寝。今日も遅くなっちまった。そしていい1日だった。