てらのバイク旅

日本社会でガッツリ働きながら海外をバイク旅して、体験したことや感じたこと、旅の情報を綴ります。 モンゴルバイク旅の素晴らしさと情報を発信したいと思い、立ち上げました。

大陸の道と、モンゴルの嵐

85日(土)

ツーリング2日目。

朝方、寝ている時にテント間近に複数の馬が訪問し、ピリッと緊張感が走った。結局フィジカルコンタクトはなくことなきを得た。

朝メシにノーミンスーパーで買っていたパンを食って出発。

今回の旅はとりあえず西へ、できるところまで行ってみようという計画(?)

本当は鷹を操るカザフ族の里、モンゴル西の果てのバヤン・ウルギーを目指したかったが、「遠すぎる」とのこと。氷河擁する山もあるし、いつか行ってみたいな。

 

現実的には、とりあえずモンゴル中央部の山岳地帯にある湖、テルヒン・ツァガーンまで行ってみよう。

 

ハエ草原を出、西進。アスファルトはひたすら草原を突き抜け、時折村が道沿いに姿を現す。いくつめかの村で昼食。今日は前回の反省を生かし、メインとスープを両方頼む。両方とも肉の味が濃い。最高だ。

意外と野菜も付く。ほぼトマトとキュウリ

腹ごしらえを済ませ、快調にアスファルトの幹線道路を地図通り真っすぐ進んでいた。真っ直ぐだ。いつの間にか舗装路は消え去り、道はダートに。

 

…日本で国道走ってていきなり道消えることあるか?(後からGoogle mapで見たら、まっすぐは一応新道だった)

 

しかし、遂に求めていたモンゴルだ。

地平線まで真っ直ぐに消えていくオフロード、これが世界だ。これを味わいたくてここまで来た。本番が始まった、と思った。踏んだ水溜りの泥水だって心地よい。

念願のどこまでも続く野生のダート!喜びが溢れ出た

 

と、調子に乗っていたところで、大きな問題が。

事前に聞いていた給油事情は、「幹線道路沿いには必ずスタンドがあるから、心配はいらない」とのことだったので、1つのスタンドを見送っていた。

ところが太い道といえどダート、どうみてもスタンドはなく、mapで確認しても次の町には間に合わない距離。

そしてそうこうしている内に、リザーブに入る。

このままでは草原の中でガス欠だ。

 

もうやむにやまれず、ゲルでガソリンを分けてもらうことにし、ゲルを訪れる。

この国のゲルには優秀な番犬が必ずいて、見知らぬ者が近付くと、容赦ない洗礼を受ける。

こういう時「サンバノー!」と家主に向けての挨拶を叫ぶと、番犬も客か?と警戒体制を一瞬緩めてくれる。

ゲルに訪問する際は必ず声がけを。

 

1軒目のゲルでは分けるガソリンを持っていないと断られ、2軒目へ。

事情を説明すると、どうやって分ければ良いかを一生懸命考えてくれ、家のバイクのガソリンタンクからホースを外し、ペットボトルにガソリンを抜き取って分けてくれた。

お礼を述べて料金を払おうとすると、「お茶を飲んでいけ」と、招待を受ける。

お茶と馬乳酒。アルコールはほぼないので旅の途中でも…

 

この国初めてのお宅訪問。煮出した茶をミルクで割ったお茶と、パン、それにつける用のクリームチーズのようなもの(手作りするらしい)と、ビスケットのようなものを出していただく。

こっちはガソリン乞食だぜ?懐が深い。。

 

そろそろお暇をと、感謝の気持ちを伝えて出発。本当に助かりました。




どこまでも続くダート、こんなに心地よいとは

当然のように道に羊も転がっている。



写真撮りまくりながら楽しく進んでいたら気づけば夕方
6時頃に。モンゴルではまだまだ日が高いとはいえ、そろそろ野営地を決めなくては。

眺めのいい所がいいなと走っているとちょうどいい湖が。

遥か遠くの山に黒い雲が掛かっているのが気がかりだったが、風向きをみてもこちらにはやって来ないだろうと判断し、荷を解いてテントの設営に入った。

 

と。

 

「風向きが変わる」という言葉があるが、ここまで物理的に、そして逼迫感をもって言葉の意味を実感するとは思わなかった。

一気に今までと真逆のこちら向きに、嵐のような強風が吹き荒れ、真っ黒な雲が瞬く間に襲いかかってくる。

旅立つ前に聞いた「3時までにはその日の行動を終える人がいる」という、まるで理解不能だった言葉が頭をかすめる。自然は甘くなかった。

 

一瞬テントを諦めようかと思う程の速度感をもって頭上に到達しつつある風と雨。

大慌てでどうにかバッグに道具をブチ込み、アクセルを全開で捻る。すでに大粒の雨が全身に叩きつけられている。

この嵐に呑み込まれたら終わりだと瞬時に感じる程の猛烈さ。

そしてなにより、頭上で轟く雷鳴と、この大草原の中で地上から唯一突起した、鉄のカタマリとひとセットの俺。

 

本気で、ヤバい。

 

兎にも角にも嵐から離れようと走るが、逃れられない。

 

どうするべきかと思っている内に、家畜の群れが視界に現れる。

家畜が集まっているということは、他の場所より安全なのかも知れない。そう思い必死にハンドルをそちらへ向けた。

 

すると、視界の隅に1軒のゲルが。

 

「サンバノー!!」番犬はすぐに止まってくれた。

扉が開き、中から民族衣装を着た若者が現れる。

 

 

続く